幻聴
今の作業所は、同じ室内で各々が違う作業を割り当てられ、いつも大体パソコン作業と軽作業に分かれるのだが、帰り際、一人が
「パソコンの方の子って、なんで『バカみたい』とか言うの?」
と言うので
「幻聴だよ。私も同じ症状があるけど、本気にすると頭に来るから気にしない方がいいよ。」
と言った。
実際、私はパソコンの方にいたのだが、皆静かに作業していて、誰もそんな事は言っていなかった。
かつて、私がよく聞こえていたのは
「臭い」
「ダサイ」
「気持ち悪い」
「死ねばいいのに」
だった。
ぶっちゃけ、この病気の人はルックスに恵まれなかったり挙動不審な人も多いので、世の中良い人ばかりでないから、「ダサイ」「気持ち悪い」は、自分に向けられて実際に言われているに違いないとずっと思っていた。
だが、自分には聞こえていない悪口を、他の人が聞こえていると言い、自分がさとす側に回るのはなんだか妙な、それでいて新鮮な気持ちだった。
人にそうさとしていると、自分に聞こえてくる悪口も、やはり幻聴なのではと思えてくる。
精神障害の当事者を、少し良くなった当事者がサポートするピアサポートというのがあるらしいが、そこでサポートされるのは、重症な方だけでなく、少し症状が軽くなった方も、それによって癒されるのかもしれない、と思った。